代名詞に関する文法規則を定式化したいと思った

代名詞に関する文法規則を定式化したいと思った。定式化してみた所、以下のようになった。

         C(k)=Sen      (k=1,2,3)

ただし

Sen=1:⇔文=正規文

Sen=0:⇔文=非文

かつ

C(k)=1:⇔文がckを満たす

C(k)=0:⇔文がckを破る


(前提:代名詞以外の要素は全て正規)

以下導出。ckの定義も以下。





代名詞には次の三通りの表現がある。(正確には全ての名詞句)

照応"anaphora"(再帰代名詞:oneself、相互代名詞:each other等)
代名詞的表現(人称代名詞:he,she等)
指示"reference"(固有の指示機能を有する名詞句:the man,Tom等)

これらの名詞句は文構造の適格条件による拘束を受ける。拘束を満たせば正規文、破れば非文となる。

c1:照応→先行詞によって同一S内でc統御される。
c2:代名詞的表現→先行詞によって同一S内でc統御されない。(Sバリヤは有効)
c3:指示→先行詞によって常にc統御されない。(Sバリヤを透過)

ただし、c統御(c-command)の定義は以下
:→ある接点が他の接点を直接支配する時、前者を母、後者を娘とし、娘同士は姉妹である。この時、ある接点はその姉妹及びその支配下の接点をc統御する。

例を見る。(ここではSバリヤ=Bobbyになっている)
A)Tom likes himself.
B)Tom likes him.
C)Himself likes Tom.
D)He likes Tom.
E)Tom likes the man.
F)Tom thinks that Bobby likes himself.
G)Tom thinks that Bobby likes him.
H)Tom thinks that Bobby likes the boy.

A:himself=Tom→c1を満たす正規文。
himself≠Tom→c1を破る非文。
B:him=Tom→c2を破る非文。
him≠Tom→c2を満たす正規文。
C:c1を破る非文。
D:he=Tom→c2を破る非文。
he≠Tom→c2を満たす正規文。
E:the man=Tom→c3を破る非文。
the man≠Tom→c3を満たす正規文。
F:himself=Tom→c1を破る非文。
himself=Bobby→c1を満たす正規文。
G: him=Tom→c2を満たす正規文。
him=Bobby→c2を破る非文。
H:the boy=Tom→c3を破る非文。
the boy≠Tom→c3を満たす正規文。




以上のように、代名詞の表現形によってその名詞句が満たすべき拘束条件が決定し、その条件の満足度に従って文非文が決まる。そこで、代名詞に拘束条件ckを与えるパラメータk∈{1,2,3}を持たせることで、代名詞の文法規則を「ckの是非が文非文に一致する」と一文で表せる。
後はこの日本語をわざわざ式の形で書くために、適当な関数C(k)とSenを作る。
定義は以下の通り。

Sen=1:⇔文=正規文
Sen=0:⇔文=非文

C(k)=1:⇔文がckを満たす
C(k)=0:⇔文がckを破る


これらを用いることで、代名詞に関する文法規則を

C(k)=Sen   (k=1,2,3)

と書ける。
こうして代名詞に関する文法規則が定式化できた。